2022年雪組 心中・恋の大和路について

宝塚

記録です。特に好きな作品については書いておかないと流れると知った!

キャストについて

こちらについては1979年の初演からまとめています。こちらに表形式で貼るか、Googleスプレッドシートで貼るか迷い中…
2014年より前のキャストについては、まとまっているブログを見つけましたのでリンクを貼ります。こちらと、宝塚歌劇団公式の公演情報を基にキャストまとめを作成しています。

◆ 歴代配役表 『心中・恋の大和路』 編 ◆ | 宝塚・・・我が心の支え。

ROCK in TAKARAZUKA アルバム 星組 「心中・恋の大和路」

キャスト | 雪組公演 『心中・恋の大和路』 | 宝塚歌劇公式ホームページ(2022年)

キャスト | 雪組公演 『心中・恋の大和路』 | 宝塚歌劇公式ホームページ(2014年)

手前味噌で恐縮ですが、上記をもとに作成しました簡易なキャストまとめを貼っておきます。こちらからどうぞ。

冥途の飛脚について

心中・恋の大和路は、近松門左衛門の「冥途の飛脚」をベースに作られた作品です。
「冥途の飛脚」は近松門左衛門の作品の中では世話物と呼ばれるジャンルで、江戸時代の一般庶民を主人公として描いていることが特徴です。以下に、「冥途の飛脚」の概要を引用します。

【初演年】
正徳元年(1711年)7月以前(推定)
【初演座】
竹本座
【ジャンル】
世話物
【構成】
三巻
【作品の概要】
宝永6年(1709年)末に起こった、飛脚屋の横領事件を元に執筆された作品です。この事件は、多くの浄瑠璃や歌舞伎作品に脚色・上演されました。
【作品の現在】
本作品の改作として、正徳3年(1713年)の『傾城三度笠(けいせいさんどがさ)』、安永2年(1773年)の『けいせい恋飛脚(けいせいこいのひきゃく)』などがあります。『けいせい恋飛脚』は、近松の原作では雨だった「新口村の段(にのくちむらのだん)」を、情緒豊かな雪模様に設定しました。歌舞伎では、これを『恋飛脚大和往来(こいびきゃくやまとおうらい)』(寛政8年[1796年]初演)と改題の上、上演しています。さらに、この『恋飛脚大和往来』が文楽の方に取り入れられ、現在も「新口村の段」は、『恋飛脚大和往来』の台本によって上演されているのです。

文化デジタルライブラリー 近松門左衛門 主要作品紹介【冥途の飛脚】

歌舞伎演目案内の「冥途の飛脚」のリンクも貼っておきます。こちらからどうぞ。

作品の舞台について

作品の舞台となる淡路町や新町遊郭は、現在は大阪のオフィス街です。淡路町については、大阪メトロでいうところの淀屋橋~本町間、北浜~堺筋本町間に位置し、淡路町という町名は今も残っています。…とこれだけでは味気ない説明ですが、その当時は商人の町でした。

地図で示されたところが、淡路町のエリアです。

対して、新町遊郭は大阪で唯一江戸幕府公認の遊郭だったそうです。
新町遊郭の様子についてはこちらの記事が詳しいです。

遊郭は吉原だけじゃないゾ!絶世の美女もいた「大坂新町」へ明治のガイドブックでGO! | 和樂web 日本文化の入り口マガジン

現在の新町遊郭近辺を歩かれた方のブログ記事です。

新町(大阪市西区)

私も新町遊郭跡地を訪れました。

新町遊郭跡地
忠兵衛がお金を届けなければならなかった堂島の現在の様子。

梅川忠兵衛の記念碑もあるようです。大阪のオフィス街、古典文学の舞台となっている影響もあり思わぬところに記念碑があることが多い気がします。

奈良県橿原市には、忠兵衛・梅川が最後にたどり着いた新口村がかつて存在し、その場所に記念碑があります。

忠兵衛の職業 飛脚屋について

飛脚屋は書状と貨幣を運送する職業です。以下にwikiからの引用を貼ります。信用第一・連帯責任が強い職業であることがうかがえます。また、劇中で感じたことですが、まだ幼い忠兵衛を他の飛脚宿集が見守っているようにも見受けられました。

「飛脚屋」はもともと大坂発生のもので、書状と貨幣を預って輸送していた。十八軒の飛脚屋による仲間(組合)が作られ、もしその中で品物の輸送ができなくなった場合には、まず飛脚屋仲間でその事情を取調べ、連帯責任で以って相応の負担をした。顧客からの預かり物を盗みなどした飛脚屋は家財没収の上、死罪という厳しい掟が定められていた。「封印切」とは飛脚屋が人から預かって送る金の、その封印のある包み紙を破くことであり、「新口村」の最初において「十七軒の飛脚問屋あるひは順礼古手買ひ…家々を覗きからくり飴売りと」とあるのは、亀屋以外の組合加盟の飛脚屋から、忠兵衛捕縛のための追手が様々に変装して村中をうろついていたということである。

wikipedia 冥途の飛脚より

梅川の職業 見世女郎について

こちらについては、前述の文化デジタルライブラリーより引用します。

近松の書いた世話物の多くに、遊女が登場します。『冥途の飛脚』の梅川(うめがわ)をはじめ、近松の描いた遊女のほとんどが、身分の低い遊女です。

遊女の身分には上下の差があり、当時の京都・大坂では、4段階に分かれていました。最高級の遊女を「太夫(たゆう)」といい、次に「天神(てんじん)」、「囲(かこい)」と続き、最下級が「見世女郎(みせじょろう)」です。梅川は、この見世女郎でした。

見世女郎は、遊郭の店先で、大きな鳥かごのような格子「見世格子(みせごうし)」の中から、客を招きました。揚げ代(あげだい・遊女や芸者を呼んで遊ぶための代金)も安く、あたかも見本品のように、格子越しに客の視線にさらされる、つらい身分だったのです。近松は、こうした下級遊女たちを、情が深く、優れた心ばえを持った主人公とし、恋の物語を描きました。

なお、『冥途の飛脚』で、梅川の仲間として登場している遊女「鳴戸瀬(なるとせ)」「千代歳(ちよとせ)」は、当時の実在の遊女です。他にも、実在する遊女や茶屋の名前が登場します。『冥途の飛脚』は、当時の観客への、遊郭の紹介も兼ねていたのです。

文化デジタルライブラリー 近松門左衛門 主要作品紹介【冥途の飛脚】

引用しておいてなんですが、冥途の飛脚、当時の観客への遊郭の紹介も兼ねていたのがなんとも…現代で言うと某風俗あっせんトラックみたいなもんだったんだろうか。世話物、そんな高尚じゃないしね。

あんまり〇〇新地の話とか現在の風俗には触れたくないのでそこが気になる方は各自お調べいただきたいのですが、そもそもが自分から志願して就く職業ではないことと、でも忠兵衛も養子に出されて飛脚屋だしなあと…梅川も忠兵衛も自分で望んで今の立場になったわけじゃないなと思いました。

賃貸不動産のhomesが大阪の遊郭の記事出してたんで貼っておきます。
大阪の遊郭の歴史。遊女と花街と遊郭 | 住まいの本当と今を伝える情報サイト【LIFULL HOME’S PRESS】

これは吉原についての記事ですが、あまり食事もよくなかったようです…栄養状態の悪い中遊女として働いて身請け以外抜け出す方法がない状況のことを物語として眺めている、って思うと落ち込む(わかって見てるけど)
階級によって大きな格差……遊女の食事事情 (2018年5月25日) – エキサイトニュース

千日前について

劇中で「千日前でさらし首」という台詞がありますが、千日前はかつては火葬場で心霊スポットだったとのこと…
詳しくは以下の記事をご覧ください。現在ビッグカメラがあるあたりがかなりいわくつきで、火災が起こったりと亡くなられる方が多かったようです。

千日前は実はかなりの心霊スポット!心霊現象・心霊体験をご紹介! | たび日和

作品所感

ただただつらい世話物を宝塚の色にして見せ方変えてくれてありがとう菅沼潤先生…
情念もそうだし、宝塚で廓を描くことでかかるフィルターで見えなくなるものもあるし、まったく明るくなくてしんどいばっかりなのに長年にわたり再演が続いていることは、この作品の吸引力と、どの時代でもこれを上演する使命があるのかなと感じます。
かもん太夫は身請けされて、街の女の格好で色里を抜けますが、「街の女の格好」は本人の意思ではなく身請けした側の要望なのですよね…色里を抜けられたら何でもいいというのが胸がキュッとなります。
梅川はそうならざるを得なかった梅川、忠兵衛はどこかふわふわしていて商人の風情ではない、その孤独が二人を引き寄せて情念で縛ったのかなあと…
自分というものが無いように見えた梅川、そうでもしないと生きていけなかったし、残酷だが忠兵衛でなくても、この置屋という地獄から出してくれるなら誰でも良かったのかもしれない。忠兵衛も、これまで梅川につぎ込んだ分引けなかったのかもしれない。正解は分からないし理由は何でもいいけど、二人の地獄への道行を縛る絆がほんのり見えた。

例によってお芝居が上手な方で揃うのも心中恋の大和路の魅力で、特筆すべきは希翠那音さんの声の良さですね…このままいい男役さんになりそうで楽しみです。壮海はるまさん、真那春人さんは安定して上手いとか、上手い!を書き始めるとキリがないので追々…もう全員好きになってしまうし、次の公演が、雪組がずっと楽しみになってしまう。

と、ここまでつらつら書きました。本日ちょうどディレイ配信、そしてゆくゆくはスカイステージやオンデマンド配信、円盤で残りますように。

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