ミセン@新歌舞伎座 20250111感想文

ミュージカル

世界初演‼日本初演!人の働くこと、生きていく営みの一つを噛み締め味わう爽やかな作品が世に放たれました。
今回は全部で18公演です。大阪公演はプレビューが2025/1/10、本公演が1/11~14、次の愛知公演が2025/2/1~2、東京公演が2025/2/6~11です。(参照元 ホリプロのミセン公式)大阪公演のトライアウト感…笑

ホリプロ公式Youtube

稽古~新歌舞伎座でのプレビュー初日までの映像がアップされています。

グッズ

グッズにワンインターナショナル社員証風ステッカーがあり、自分じゃない人の社員証をお金出して買うという謎ムーヴが体験できました。

見え方とか演出とか

一階客席に降りる演出もありますが、今回は三階席から観たのでそこはよくわからず。でも本舞台にも役者さんいるし二階席、三階席でしらけるような客席降りではないと感じました。

1/11カテコ撮影可能回で、三階席からバンドまで映るように拡大して撮った様子。機種はXiaomi使ってます。

この写真は黒い床に白い線が見えますが、舞台全体を碁盤のように使っており、シンプルだけどとても効果的に思いました。碁盤として全体を観るならやっぱり二階席、三階席が良さそうかな。

20250113追記 客席降りが公式Instagramにアップされていました

ステージングが好みだった/衣装と振付の対比

宝塚でも良く振付をされているKAORIaliveさんが今回振付・ステージングを担当されています。これが効果的で、宝塚での振付よりよほど合っているな~とすら思いました。動きで人の感情や風景を表す、そこにメッセージをのせるのが得意な感じ。今回は早川一矢さん、MAOTOさん、熊沢沙穂さんといった、私がダンサーとしてとても好きな方々がアンサンブルに揃っていますが、その方々がいる意味がとてもよくわかる。コンテンポラリーもできる人たちを集めたんやなあ。特に早川一矢さんはアクロバットも得意とされていて、アクロで跳ぶたびに舞台に彩りがあってよかった。

働く人が主題だと衣装がスーツでどうしても地味に見えるところ、踊りや人の動き方一つ一つに目を惹くものがあり、ここで衣装まで一ひねりあると全体がうるさくなるところを、よくまとまっていたと思う。メッセージを軸に組み立てていくバランスがいい。ここもまた観てて疲れずに爽やかに客席を後にできたポイント。

今まであまり衣装と振付のバランスを意識したことがなかったんだけど、身体表現とその身体と捉えるとこれはバランスが大事なものなんだね。どちらもキャラクターを表し物語を動かす役割があるから、どちらかだけで物語の中に在るものではないし。

ゲネ映像埋め込んでみるけどやっぱぱっと見は地味、でも動くと面白いし歌うと響く。
そうか、この衣装も動きも囲碁ということか!よくできている。

そもそも働く人のミュージカルそんなにない

あるけど面白く感じなかった、が正かも。なぜならイマジナリー労働の話をされましても…と思ってしまうことが多いから…

今って働き方も雇用形態もばらばらで、労働という言葉一つでみんなが同じものを想像することはまずない。しかし物語のメッセージを受け取って抽象化して自分の課題に落とし込むとかはできそうで、でもそれって物語のつくりが「働くこと」に真摯でないと、「働くこと」のフレームだけ使った夢小説みたいになるため…

ミセンではバックオフィスと工場労働の現場それぞれの見えてる世界の違い立場の違いも描かれていて、違いと繊細な機微があったから刺さり方とか、安心するところが多かった。見えてる世界が違うからと言って対立することはないので、違いがあっても協力するとか、一人で仕事しないとかがあった。まあ人が組織にいるのに個人商店になりがちなのはマネジメントだったり組織構造の問題がありますが…

多分これは編集が上手い

元が長尺のウェブトゥーンでありドラマであり…描き切れてないところ、舞台にするのにあたって切ったことは多そうな感じ。日本のサラリーマンに刺さるところ、日本の労働の嫌なところと重なるところは残して、端折ったな。
現場を分かっている人の鼻持ちならなさ、成功してしまった人とハラスメント、でも成功しても会社員である以上切られるリスクはあるなどなど。その話ばっか書くんじゃなくて短い尺でもそれが良く伝わるようにはしてあるけど、そもそも舞台観て現実を思い出したくない人はこれ観ないほうがいいかもしれないな、は思った。

安蘭けいさんのソン・ジヨン次長が日経WOMANにいそうな女性で、うおー私はこのタイプにあんま好かれないよな…を思ったけど、自分がそう思い込んでるだけかもな、も。これは私が男性比率七割以上の環境でなんとか生き延びてしまったけど、それは他の女性とあんまり触れ合ってないから命拾いしてるかもを最近思うから。女性管理職トークセッションで他の女性の話を聞く、は私は乗れないけど素敵だと思いますよなんて言ったら絶対に仲間に入れてもらえなさそうとか社内の動きを眺めながら。

楽曲がいい

全曲Youtubeで聴ける出し惜しみの無さ…劇場に行けない人もこれで雰囲気がよくわかる。生で観るのが一番いいけどそれぞれ都合があるから、こうして公開されるのは有難いですね。

韓国ミュージカルの曲ってスッとメッセージが入ってくるけどリズムとかコードでひねってる感じがあり、聞くよりも実際に歌ってみるとそれが分かるので、是非おうちでYoutube見ながら歌ってみるといいのではないか。これは私が良くやる作品の味わい方ですが、劇場ではおとなしくしながら刺さりポイントなどを集め、家でYoutubeで公開されている情報を基に一緒にやってみるとよくわかった気がしていいです。(気がするだけです)

観る前に稽古場映像とか何も見ずにいたけど、こうやって稽古場公開されてるとより味わえていいね。

成功とは何か

ハッピーエンド、大成功エンドではないのに爽やかに観れたのはなぜかを考えると、人の自立なり思考なり組織を選ぶか個人を選ぶか、ゼロ100じゃない、割り切れない人の営みが丁寧に描かれているからかなと。悪者を成敗してみんな幸せ!は現実にはないし、組織にいることは安泰でも=幸福かというと組織にいるものにしか分からないしんどさがある。個人商店は安定が遠いこともある。

Xのおすすめ欄に流れる年収で切ってひとをばかにするやつとか、ワーママと専業の対立を作りたい人とか、人の本心が地獄なのかSNSに地獄が作られているのかわからないものがあり、もうXは言葉を流すべきツールでないとすら思うのだけど、今も昔も労働と階層とか見えてる世界の違いとかはあるわけで、舞台の上でこの物語が在ることが救いというか、答えのない問とそれに向き合う力を頂いたように思います。

観てよかった

よかったですね。前田公輝さんの底力すごいな…思考と台詞の説得力がいい。
今回はパンフレットや公式にプリンシパルについて誰が誰のカバーキャストかまで書いてあり、カバーやスウィング発動はインシデントが発生したとか大事を取ってということなので、良くないときでもそんなに気にしなくてもいい時でもあるんだけど(どっちだよ、とは思いつつ人は気軽に休めたほうがいい)、カバー・スウィングが公表されていると安心して見れるな、を思った。

組織の歯車なんて言いますけど、歯車にすらなれないとか、歯車も立派とか。ミセンは未完成といういみで、ミセンからワンセン(完成)へ、でもその完成が何かは作品の中で定義されていない。誰も成功してないじゃん!って思う人もいるだろうね。それを味わえるか、定義された成功ではないこと、Xのおすすめ欄なりビジネス誌なりで消費されるものでないことの値打ち(※おすすめ欄が嫌いすぎるだろ)、自分はまだやっていけると背中を押された気持ちになること、励まされること。

違っても、分かり合いたい。100自分と重ならなくても。誠実に作られた作品に出会えることは自分の人生の一手を進める力足り得る。だから観てるんだった。

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