DEATH TAKES A HOLIDAY@梅田芸術劇場 20241109 感想文

ミュージカル

観てきたので感想文です。結構現実的な話と思ったのと、演出が大味に見えるな、が総括。相変わらず考えながらだらだら書くので読みにくいです。ネタバレばっかだよ。

演出とか箱はこうだったらよかったんじゃないか

脚本のピーター・ストーンと音楽のモーリー・イェストンのイメージに引っ張られすぎたのか、タイタニック同様ドラマシティでサザーランド演出で観たかったね…という身も蓋もないことを思ってしまった。今回の演出合わなかったのかなあ、板の上の明るさと装置の大きさについてなんか違うなと感じたけれど、シンプルに梅芸メインホールだと大きすぎたんじゃないかな。
じゃあどこがいいかというと、ドラマシティかSkyシアターMBS…生田先生のやりたい演出ができる劇場かは分からないですけど、もうちょいコンパクトな箱だと視覚的効果も違うし、客席と芝居の間の空気も違うし。繊細な音楽と幻想的な世界観を生かすためにもまた上演することがあるならば、梅芸メイン以外でお願いしたいと思います。

時代背景とか演出と解釈違いだったとか

この作品は第一次世界大戦終戦後が舞台ということは、少しずつ第二次世界大戦の気配がある時代だよなあ…を思いました。1920年にムッソリーニがファシスト党を結成しているので、事実ひたひたと戦争は近づいている時代です。その現実の狭間に夢を見たくてヴィラ・フェリーチタに人々は集い、グラツィアは夢を見たのかな。私の受け取り方が弱かったのかあんまり戦争の気配を感じない演出だった。私はグランドホテルも戦争の気配を感じ時代の薫りが色濃いサザーランド演出が好きなので、生田演出はまあ解釈違いなのかもしれないな。時代を描けば描くほど板の上に乗せられる夢に限界が出てくることもあるので、おとぎばなしの合間に少し陰を混ぜたくらいでいいのかもしれない。生田演出ではあえて書いてないんだろうなと思うところもあるので、書かないということで見せたいものがある、はわかる。
(※私が好きでチケット足した作品がパレードとかラグタイムなのでそもそもはい…この辺は本当に好みの話であって、何が好きだからこの人はどうだみたいなことじゃないです。)
私が、装置を動かす人が見えるとついそっちを観てなるほどね…と興味深い気持ちになってしまうのも鑑賞にはよくなかったのかもしれない。見切れない席をとったほうがいいね…

楽曲が良かった

寄せては返す波のように同じ音型、似た音型をつないで音楽が続いていくのがいい…人の心の機微を音の形にするとこうなるのかな、と思える音楽だった。
かなりクラシック寄りの楽曲が揃っており、もうちょい気合い入れるとオペラに転べるよな~みたいな。ミュージカル音楽の面白さはここで、クラシックを基準にバリエーションがあって、ストーリーや登場人物に沿って音楽が展開していって、その中にオペラの要素がありポップスの要素があり…というところ。音を味わうとか音の中の物語を読み解く、それに舞台の上の色彩が伴う、ストーリーの形が見える、音が立体に見える…みたいな鑑賞を私は好むので、その観点だとデスホリはかなり好みです。幻想と現実の間まで音になっているのが心地よい。モーリー・イェストンから見える世界ってこうなのかな。

役とかお話とかのこと

思った順に。

軍人エリックのとんちゃん(東啓介さん)、なんか今回も時代背景など重いもの背負わされ係みたいな役やな…と思った、アリスの皆本麻帆さんとの身長差一周回ってめろくてよかった…エリックは死と隣り合わせだったことが伺えるし、アリスのナンバーは今この瞬間の喜びのようなものを感じる。
コラードの内藤大希さんはなんやかんやパレードぶりかな…一番生命力強いように感じた。相変わらず上手いですね。

小瀧望さんはザ・ビューティフル・ゲーム以来です。クラシカルな楽曲の音域にハマる伸びやかな歌声が良かった。死神はサーキの姿になって人間を知っていくところがものすごく”生きている”ように感じられて、2日間のうちに生きることを知ったからこその結末なのがよくわかった。生きているからグラツィアは惹かれたんだろうな。
今回は美園さくらさんグラツィアで観たけれど、生きていて好奇心旺盛でチャーミングなグラツィアだからこそ死に向かうことすら永遠に生きる選択の一つとしか思ってなさそうで、危うくてよかった。危うさに人間味、現実味を覚えたのかなぁ、サーキに惹かれるグラツィアはおとぎばなしとは思えなかったのですよ。
現実的なことを言ってるようで横文字だらけで嘘っぽいとかあるじゃないですか、グラツィアはその逆で、夢見心地のようで彼女から見えている現実はこっちなのだな、の説得力があって良かったのです。死神はいるし、もしかしたら今も人の姿でその辺に紛れ込んでいて、少しのかけ違いで死神と出会うこともあるのかもしれないな、なんて。そう思えたところはデスホリみて一番よかったところ。

ダリオ(田山涼成さん)とエヴァンジェリーナ(木野花さん)の老いたカップルのほうが、サーキとグラツィアより地に足ついて、しかし輝いてるように感じられたのもよかった。エヴァンジェリーナにはサーキが死神だと分かっているわけで、死を機に正気になってダリオを愛せたのがよかったね。ダリオはずーっとエヴァンジェリーナのそばにいて、なんかこうカップルらしくていい。明るい場面でダリオがひときわ輝くように歌の割り振りがあったのがよかった。
サーキとグラツィアは夢の中の現実、ダリオとエヴァンジェリーナは現実の中の夢、みたいに対になってていい。

あとは相変わらず熊沢沙穂さんの踊りが好き、っていうかアンサンブル踊れる人で固めてるからダンスナンバー良かった、武藤寛さんがいると場面が締まる、吉井乃歌さんかわいい~ などです。アンサンブルにメリポピ出演者を探しがちなメリポピのおたく乙…

DEATH TAKES A HOLIDAYというタイトルだし、死側から見た生ってこんな世界なのかな、これほどまでに世界が輝いていてほしいものだな、と思えたのもよかった。

そのほかのこと

今の時代もまあまあ暗いのでデスホリの時代と通じるものがあるって思っちゃったのかもしれないね。その中でも人が生きていることは尊い、がデスホリの伝えたいことの一つなのかな~
9to5はおとぎばなしに見えてデスホリが現実に見えたのは何だろうな、9to5のほうがよほど現実的な時代背景、ストーリー展開なのに、ありそうに思えなかった。オフィスワークが自分に近すぎるからかな。

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