20230408 RENT@新歌舞伎座 感想文

ミュージカル

2015年、2017年ときて今年も、RENTの世界に浸ることが出来ました。

2015年当時わりと鬱ってたのもあり、というかそもそもの気質がネガティブで根暗でどうしようもないんですが、RENT観ると生きようって希望が湧いてきて力がみなぎってくることを覚え…。以来、自分の心が呼んでいる作品だ、と認識しています。今回グッズにアクキーあったから買っちゃった、お守りにするんだ。
2023年の今は30歳を過ぎたいい大人だし、今更この作品でビービー泣くとかないやろ…と思ってたら全然そんなことなくて、最初のギターの音で泣いちゃった。

なぜこの作品が好きか、それはX世代の描き方、あの時代の描き方、マイノリティの描き方と、作品のテーマが普遍的であること、に尽きます。
今の時代ってすごくギスギスしてると私は思ってて。戦争があって、差別は可視化され、格差にあきらめざるを得ないことも早々に分かるようになり、希望を見出すのが難しくて、くだらないことに魂売って大切なものを下に見てお金にするような、すり減る瞬間が多い。だからこそ…この作品のNoday,but todayであったり、生きることそのものの尊さはずっと必要とされる。
作品が必要とされているということは、誰かが希望をそこに見出しているということで、希望を求める人がいるってことで、で希望を暮らしに見出すのが難しいから、そうなるんだよな…って思っちゃった。多分期日前投票行った足で劇場に向かったからだ。政治のこと考えた頭で劇場に向かうのは別に悪くないけど、現実との対比が濃くなってしまうね。

とダラダラ書いたわけですが、私にとって、観れば観るほど解像度が上がって心に届くのがRENTだなぁと。単純に、回数と年齢を重ねると分かること増えるからね。
今は自助会であったり当事者会であったり、福祉について考える機会が自分の暮らしの中に増えていて、RENTの時代からマイノリティ排除の向きがあるとかほんと変わんねえな…と渋い顔していた。
RENTに出てくるのはほぼみんなマイノリティで、所謂「普通の人」の振舞しているマークもユダヤ系だし、モーリーンとジョアンナはレズビアン、コリンズとエンジェルはゲイ、ロジャーとミミはHIV…でミミは薬物やってるし、みんなマイノリティ性を有していて。その中で自然と連帯が産まれたのかな、と思った。
弱者排除に立ち向かうのはここにいるよ!のアピールと、連帯と、抗議なので、RENTに全部ある!と気づいたときの心の動きよ…うまく言えないけれど、彼らはそこに生きてるんだ!って感じたとき、なんかもう心の高鳴りが爆発的だった。現実問題、ミュージカルというものの価格は社会的弱者に届く価格かというと微妙だし、社会的弱者に必要なのは芸術より衣食住であり、ミュージカルを通じて弱者排除に心を寄せるというのは傲慢なことかもしれない。ミュージカルにお金を支払うことが出来て、そのために時間を確保できるのは特権的ではないか、とも思う。しかし…なにかの当事者の端くれとして、心が動いて生きる希望が湧いたことはここに記しておきたい。

真面目なこと書いちゃったから適当なことつらつら書くね。
「飛んだ!」から始まるACT1の爆発的なパワーにまずやられた、新歌舞伎座ってこんなにバカでか音響でしたっけか?二階席後方からみていたので、装置を所狭しと駆け巡るキャストにまずテンションがブチ上がる!楽しい。
ところどころのVoiceMailとても好きで、うまいことメロディーに日本語が乗ってんなあとおもう。特にACT2のVoiceMailの音の重なり好き。
平間壮一さんはこれまでエンジェルでみていたのですが、マークもよくはまる…
ハロウィンの、皆誰かといてマークはひとりぼっちで、「僕は…いない。どこにも。」でボロ泣きした。ACT1終わりでぶち上げて新歌舞伎座の外に出るくらい元気になっていたので、ACT2の泣いちゃう場面がことごとくしんどい。
古屋敬多さんのロジャーも歌うま。前回堂珍ロジャーに沸いてたのを思い出しつつ…ちょっとかわいいロジャーと思う。
百名ヒロキさんエンジェルはガタイよくて顔がかわいいのがいいギャップ。かわいいエンジェル…Contactで消えそうなのに胸がぎゅっとなった。
Contactは生々しい動きと歌詞だけど(これはギリ同意のある行為なんかなとか考えた)、その中でエンジェル消えてくのがつらくて見てられなくて…Contact曲中の性交渉の「終わった」とエンジェルの命が「終わった」が重なるのがつらい。HIVはゴムなしの性交渉だと感染率あがるとされている中の、歌詞中のゴムのこととか。(これ書くのに調べた 感染確率 Check! | 大阪エイズ情報NOW)
今は、RENTの時代より医療が進んで、HIV当事者は生きやすくなっているんかな…と思うけれど、Contactと重なるエンジェルの命が重い。
Contactの歌詞だいぶ聞き取りにくいけどね。

で、私はRENTで初めてラブソングの良さを知った人間なのですが、まずLight My Candleいいよね…ミミがどんな子かよくわかるのと、曲中のろうそくのやりとりがいい。ミミのどっかいっちゃいそうな感じと不安定さ。
I’ll cover youは初めて泣いたラブソングですね…愛はお金で買えないと思っていたけれど愛はRENTできる、代わりにキスを…ええやんけ!!!!!!!(大声良さ叫びオタク)この、ええやんけ!!!!のぶんもACT2のI’ll cover you-Repriseでめちゃくちゃしんどくなるわけですが…今回はSHUNEEさんコリンズで観たので、甘く切ない歌声のI’ll cover youは特に悲しく聞こえた。Repriseはいろんなものがつまってるよな。一緒に暮らそう、のあたたかさ、コート買ってあげる、ライフサポートに誘うのはエンジェルにとってコリンズをより身近な存在と捉えたからなんだろうな…とか、エンジェルが亡くなった後各々がエンジェルのことを語る場面はいつも泣いてしまう。

パンフレットに注釈あるけれどライフサポートはHIV感染者の集まりで、RENTの時代から、当事者会が機能しており、語り合う場が必要とされてきたことがよくわかる。実際今の日本にもあるんだけど、病気だったり障害がないと、そして調べないと行きつかない場所です。
ライフサポートのSupportGroupで、ゴードンから始まる「尊厳無くして死んでいくのだろうか。」が繰り返されるのも重い。Wikiによると、あの場面の人たちの名前はジョナサン・ラーソンの友人たちらしいね。尊厳という言葉が幾重にも重なって広がって静かに展開していく場面、なだけなのに、重たかったや。そういう場だからこそ「僕マーク…僕マーク」の所在なさと居心地の悪さが伝わる。マイノリティの集まりにマジョリティが出向くのは、居心地が悪いこと。でもそれは普段マイノリティが感じていること。

今って抗議の活動はともすると冷笑されるよな、と思いながら観てたのがOver the moonとか一連の流れ。今回莉奈モーリーンで観たけど、細いのにすごい声でて気持ちよかった。あとギャルみが好き…(それはただの癖ァ!)ACT2でラバー着てるし、モーリーンってだいぶいいな…となった。もうだいぶ癖ですやん。
モーリーンの周り、別に仲いいかっていうとそこまででもなさそうな人たち、仲良さ普通くらいに見える人たちが集まって抗議してるってのが、そうだよな…という実感が…
抗議しないと声はなかったことにされるので。
Over the moonの前、ChristmasBellsの「真面目に生きてる!真面目に生きてる!」の繰り返し、それも主張しないと市井の人間の声は排除されるからね。ちなみに、真面目に生きてる!とライフサポートのゴードンとレストランの「ダメです今夜はお客でいっぱい…」はロビンソン春輝さんで、また素晴らしい方で…若いってだけで素晴らしいけどダンスは目を見張るものがある。
そして抗議の後のLa Vie Boheme、これでぶち上げてしまった。人生は素晴らしい、生きるに値する!のパワーが爆発していて心が震える。戦争の反対は平和じゃない、それはクリエイション!生きて生き抜く、このパワーを貰えることに価値がある…

Seasons of Loveはとても有名な曲だけど、こちらも毎度パワーを貰う曲で…生きることの尊さをぎゅっと抱きしめたくなる。長谷川開さんのソロが力強くてまたいい。
すれっからしの人間として暮らしていても、RENTで教わった、人生は愛で数えるということ、Noday,but today,生きていたいと思える時間がどれだけ大切か…人生は惰性で流すにはあまりにも価値あるもので、とか、すれっからしが別人になったかのような言葉が出てくる。この言葉をずっと本物にしていたい。
そして、RENTのメッセージはしばらくは、必要とされるんだろうな…

変な時間に書き始めたからすごいテンションの文章になっちゃった、前半と後半でなんか違う、私はRENTが大好きです。
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