ひとの善性とまた会えた劇場 カムフロムアウェイ 20240407感想文

ミュージカル

カムフロムアウェイ@SkyシアターMBS、2024/4/7 12時公演観劇してきました。ネタバレはそこそこですがノリが湿っぽいです。

SkyシアターMBSとシアターBRAVA!のこと

大阪駅西口エリアにできたSkyシアターMBSは、かつて大阪・京橋駅エリアにあったシアターBRABA!の後続劇場です。私個人としては、シアターBRAVA!最後のミュージカル公演「スウィーニートッド」大千秋楽(2016年5月)を観て以来思い出深く、確かクローズの時点で、また再開の予定があると知りその時はいつになるのだろうか…とずっとぼんやり記憶の片隅にあったものでした。
シアターBRAVA!で色々観たけれど、大阪のビジネス街に劇場があり、その近くにいずみホールがあるなんて環境が好きで、いい思い出が多いです。

そして今年3月にオープンしたSkyシアターMBSがシアターBRAVA!の後続劇場と知り、カムフロムアウェイへの期待ももちろんあるけれど、シアターBRAVA!と同じような劇場なのかなあと漠然と思っていました。
(ちなみに私個人としては職業柄Sky社の製品はそんなに好きじゃないですが、Sky製品が多く使われる場を思うとそういう仕様になるよな~という感じです)

で、思ったよりもはるかに、シアターBRAVA!だった。
劇場ロビーは立地的にもサンケイホールブリーゼと雰囲気似てる感じがありました。客席に足を踏み入れた瞬間再開の驚きと懐かしさで胸がいっぱいになり、その時点で涙が出てきました(まだ公演観てもないのに…)生きてたらまた会えるなんて私たち約束してたっけ、客席の配置とか奥行きとかもそうなんだけど、記憶の中のシアターBRAVA!そのものがそこにあって、信じられない気持ち。今これを書いていても信じられなくてドキドキする。また会えたから、なるべくたくさん会いに行きたい。

ちなみに、SkyシアターMBSの劇場会員「ミルデ」の先行でチケット確保しましたが、前方センターブロックだったので会員になっておくといいかもしれません。

SkyシアターMBSについての記事も貼ります。

どの座席から観ても臨場感たっぷり、大阪に誕生するSkyシアターMBSはいろんな楽しみ方ができる“自由度が高い劇場” | Musicman

最寄りのサイゼとかスタバ、ロンドンティールームが近いとか色々案内できることがあるから、劇場周辺のお役立ちやお楽しみ情報まとめブログ記事が書けたらいいかも。

カムフロムアウェイのこと

実は、開幕してから全然情報入れてなくて、911とキャストが豪華なくらいしか予備知識なしで臨みました。

非常事態、という意味では、2024年1月の能登の震災や阪神淡路大震災などのことも思い出すし、観ながら、非常事態の支援にあたる人たちのケアのこととかも考えた(カムフロムアウェイでは10年後のことも書かれていてよかった)それでも、911と宗教、性別、ジェンダーのことを内包しながら、温かくて力強くて人という存在そのものに希望を持たせる作品であったと思います。
ラグタイムの時も思ったけど、人間の善性を信じたいと思ったし、この作品が上演される以上は私も世の中捨てたものじゃないとか、自分もまたボランタリーの精神で行動するということ、何か助けられたら、とか考えながら劇場を後にしました。

全編通して人は人に救われる、を強く感じていて、ハンナ(森公美子/息子が消防士)はビューラ(柚希礼音/在郷軍人会会長の女性)がいて息子亡き後も支えあえていて、その温かさゆえに最後のほうの「ニューファンドランドと新装開店の店の共通点は?」で結構泣いたし、ダイアン(安蘭けい)とニック(石川禅)の空気感とか遠距離恋愛からのニックがテキサス移住からの結婚とか、起きたことは決して良いことではないが、そこで出会えた人たちがその後の支えになるって、あるよな、と思いました。
911から10年経って、おそらくはその過程で適切なケアに繋がったり、911の記憶と距離を置いて過去にして生きていく中で、ニューファンドランドであったことが救いになり続けているところまで描けているのがよかった。911について報道されることはセンセーショナルであっても、その渦中にある/あった人たちには暮らしがあるのだから。

私は普段災害や事故や事件のニュースを見ると、(それを見てしんどくなる前に切り上げるようにはしているけれど)支援とリカバリーとその後のことを思い、どうやったら風化させないとか、一人でも多く助かるにはとか、メンタルケアが行き届くにはとか考えちゃうんだけど、その辺りの疑問が観ながらでてこなかったのも、よかった。何の感想書いてるときもそうだけど、ただのいい話で終わらせるにはもったいないから、こうしてブログに書いて言葉にするのって頭を使うね。

ニューファンドランドでの受け容れ物資に赤ちゃんと妊婦と女性のための物資を調達するところ、ケビンJとケビンTの同性カップルを受け容れる酒場の空気、ムスリムの乗客アリが最初受け容れられなかったことと彼が身体検査を受けたこと、アメリカンエアラインズの機長ビバリーの行き先の決断(すごいストレスがかかることと思う)、機内の動物のケア、人間の心の動きからのざらつきとか引っかかりがあり、ざらつきがあるからこれは本当の話なんだと思えた。

演出の観点だと、日本の方言を使わずニューファンドランドの人とそれ以外の人を演じ分けるようにしていたのがよかった。方言を使う演出は難しくて、聞いた瞬間舞台上の土地ではなくその方言の土地を想起するからね…一昔ふた昔前ならそうしてた気もする。今ってブラックフェイスのこととか、演じることの当事者性とか、これまでになかったことを考えて表現する必要があると思うけれど、だからこそ今上演されてよかったな。何をやる/やらないで伝わることが全然変わるから…

バンドがオンステージなのもよかった。バンズ・ヴィジットもそうだったけど、バンドが舞台の上にいて時折役者と混ざって演奏してるのがとてもいい。一人の役者が何役もやるこの作品だから、バンドの皆さんも舞台に立つことでより効果的に見えた。

観てる最中結構自他境界が溶けて引き込まれる感覚があったし、今もパンフレット見返して時折涙を流しながらこれを書いているけれど、実は被災ケアだとかの知識がないほうが観やすかったのかなぁとか思う、私は中途半端に知識がありすぎている。
中途半端に知識があっても、ひとの善性と底力、なんでもAIに代替えされる世の中にあって人が考え演じる必要性、というかそうじゃないと伝わらないものがあるからだから自分は劇場に行く、の再認識にもなった。職業柄AI万歳!みたいな流れはあるけど、そうかな~~~~ってずっとこそこそ言い続けてるエンジニアはここに居るよ。(これは、最近オフラインでそういう話をしていたから思ったのはある、AIに対して人間はどうあったほうがいいか、みたいな)

古い記憶の中にあったシアターBRAVA!とまた出会えた作品がカムフロムアウェイでよかったな。

そのほか

咲妃みゆさんのファンやると楽しそうって思った、こういうお芝居をもっと見ていたい。
ジェンダーのこと一つとっても企業単位の取り組みは遅れを取っているよなとかをDEIの取り組み思い出した、何らかあれもよいものになればいいが、資本主義の中のDEIは宣伝や数字のため、になるしなぁ…それらに取り込まれず、適度に距離を取りながら手元の暮らしや働くことをやっていきたい。
カムフロムアウェイのような作品を観るための資金は必要、別に人的資本経営の中のDEIに貢献したいわけじゃないから…

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